『姫踊子草』の投入
2005年春~:『姫踊子草』の投入
――中指同時打鍵の実現、そして独自配列へ
月配列に復帰する前後で考えていたことが、もう一つあった。それは、なぜ月配列がプリフィックスシフトを採用しているのか、なぜ同時打鍵ではないのかという疑問である。
親指シフトの魅力は、単純に言えば、濁音を含めたすべてのかなを「一打鍵」で打てることだと思う。「一打鍵」と言うのは語弊があることは承知しているが、やっぱり二打鍵よりは早く打てると思ってしまう。同時打鍵という打鍵方法自体を疑問視する見方もあるようだが、私がNICOLAを使った印象では、一部に苦しい指使いが存在するものの、全体としては同時打鍵はむしろ快適だと感じていた。中指シフトで同時打鍵にするならシフトはすべてクロスシフトになるので、苦しい指使いは無いと思う。
机上の結論としては、少なくとも私にとって、月配列で同時打鍵シフトを使わない理由はない、と言うことになる。
月配列を中指同時打鍵で使ってみたい。この思いは今回月配列に復帰する当初からあった(*1)。
しかし、中指同時打鍵を実現する方法は限られていた。フリーソフトでの実現は難しく、シェアウェアの『姫踊子草』でないと実現できなさそうだった(*2))。
シェアウェアなので、すぐに試すというわけにはいかない。試用期間は約三週間。この三週間で二つの事を確認しなければならない。一つは、『姫踊子草』が期待通りの挙動をするかどうか。もう一つは、中指同時打鍵が期待通りの打鍵感を持つかどうか。配列を覚えるのにひーこら言っている段階で三週間が過ぎてしまうという事態は避けたい。
まずは『菱』を使って月配列U8版の配列を覚え、ある程度自信がついた段階で『姫踊子草』を試用するという手順を踏むことにした。
果たして、結果は期待通りのものだった。中指同時打鍵は十分機能する。親指シフトで感じたのと同じ快適さを親指を使わずに実現できたようなものだ。『姫踊子草』の挙動も問題なく、配列のカスタマイズの仕方も易しい。
結局、三週間どころか、三日でシェア代金を払うことを決めたのだった。
同時打鍵シフトにすると、もともとシフトに割り当てていたかなをどうするか、という問題がある。月配列U8版では☆([D],[K])と★([S],[L])で8種類のかなを打っていたのだが、同時打鍵になると[右☆左☆]、[右☆左★]、[右★左☆]、[右★左★]の四種類しか打てない。
しかし、解決策は簡単だった。☆★は同時押しをしたときだけシフトとして機能するようにし、単打で押したときは普通にかなを打てるようにすれば良い。こうすれば単打で4種類のかなを打てるので数は元に戻る。同時打鍵シフトを他の目的と共用するというのはやや問題があるのだが、親指シフトの[スペース]兼用と比べればそれほどの問題ではないだろう。メリットの方が大きいと判断。
そう、これはメリットが大きいのだ。なんといっても、単打で打てるかなが、2-263式と比べても二つ、U8版と比べると四つも増えたのである。月配列U8版で4シフトにしたために単打で打てるキーが減ってしまったのは懸案の一つ(『とりあえず月とかのブログ』2005-03-10)になっていたから、これが解消するどころか月配列2-263式よりも良い水準になったというのは、かなり大きいと思う。
しかし、実際にどのかなを置くのが良いかと考えると、極めて難しい問題であることが分かってきた。
当初は単純に、月配列U8版の☆シフト側のかなを単打に、★シフト側のかなを☆★シフトに割り振っていた。しかしこれではもともとシフト側に回るようなかなが、[S],[D],[K],[L]の単打という絶好の位置に置かれることになり、ものすごく無駄なことをしているような気がする。実際、「上下段の行き来が多い気がする」という月配列U8版の欠点は何も解消されていない(ある欠点が直ると、それまで気にしてなかった別の欠点が気になる。人間とは贅沢なものだ)。
[S],[D],[K],[L]に使用頻度の高いかなを持って来ようとすると、場所が場所だけに大幅な改造とならざるを得ない。
いままでオリジナル配列を考えるのは自信が無いので避けてきたのだが、中指同時打鍵という時点でお手本となる配列が無いのだから、もう仕方がない。
思いきってオリジナル配列を作ってみることにしたのだが……。
というわけで、kouyの日本語入力変遷記・第一部はこれで完結なのです。次回からはkouyの日本語入力変遷記・第二部、中指同時打鍵配列編になります。
これまでは過去の事実を書いてきたのですが、これからは現在進行していること書くことになります(まだ、現在使っている配列に至るまでには少しありますが)。したがって、第二部で変遷記自体が完結するのか、第三部、第四部と続くのかどうかは、まったく私の預かり知らぬところなのであります。
*1 今ではプリフィックスシフトにメリットがあることは分かった(簡単に言えば、同時打鍵だとロールオーバーで打てない。それでも同時打鍵のメリットの方が大きいと思っている)が、当時は『月-中指シフト新JIS配列』で「特にローマ字入力出身者の場合~」と書かれていたので、じゃあJISかな出身の俺はどうなるんだ、と思ってしまった。
話はずれるが、一番最初にNICOLAに手を出そうか考えていた時に「NICOLAはローマ字に比べて圧倒的に打鍵数が少ない」という話ばかりが目に付き、じゃあJISかなから移行するメリットはなんなんだ、と結構あちこち探し回った。
JISかなよりQWERTYローマ字の方が使用人口が多いので、ローマ字に対する利点を中心に書くのは当然かもしれない。しかし、使用人口が少ないからこそ、その中でJISかなを使用している人というのは、多少配列に興味がある層である、とは言えないだろうか。
ある配列にこういう利点があると書く場合は、JISかなに対する利点も書いて欲しい、と思う。
*2 『窓使いの憂鬱』にも挑戦してみたが、残念ながら使い方が良くわからなかった(涙)。今思うといきなり難しいことをやろうとしすぎていた気がする。そのうちもう一度チャレンジしてみたいと思う。今度はもっと単純なことから。

