「そうかもなあ」と思ったことは実際にその通りであった
私がこれまでに使った日本語入力配列の数は、今回試してみた3種類も合わせると、実に9種類にもなります。
(使った順番に、JISかな入力(普通のかな入力)、QWERTYローマ字(普通のローマ字入力)、NICOLA(親指シフト)、月配列2-263、月配列U8版、下駄配列、飛鳥配列、けいならべ、星配列)
すべての配列に良い面と悪い面がありました。
また、他の人のその配列を使った感想を読むと、ある配列を良い感じる部分は、人によって異なることが分かります。私が非常に快適だと感じる部分が他の人の感想を読むとそうでもなかったり、他の人が欠点だと書いていたことが私にとってはまったく気にならなかったり。他の人と180度評価が違うことも決して珍しいことではありません。
しかし、思い返してみると、少なくとも自分にとって良いものかどうか、は、意外とあっさり分かっていたことに気がつきました。
一見、日本語入力配列というものはかなり熟練しないと評価が下せないように思えます。ところが、自分に合っている配列かどうか分かるのは、その配列を日常的に問題なく使用できるというような熟練した段階ではなく、それよりはるかに前の段階だったのです。
配列を実際に試す前に、その配列について事前に調べる段階があります。その配列のシステムがどんなものか、その配列の使用者がその配列のどのような点を良いと思っているかについて、Webページに書いてある文章などを読みます。
この時点で自分に合っている配列かどうかは分かってしまいます。すなわち、書いてあることを読んだときに、「その通りだ」と思うものは自分に合っていて、「そうではない」と思うものは自分に合っていません。
私の場合、この最初の印象が覆ったことはほとんどありませんでした。実際に配列に触る前にだいたい自分に合っているかどうか分かっていたことになります。
例えば、私が親指シフト(NICOLA)を始める気になったのは、濁音も同時打鍵の1動作で入力できれば濁音後付けより早くて快適だろう、また、シフトに親指を使うというのも、小指を使うよりは良いだろう、と思ったからです。実際に使ってみると、これはその通りでした。
親指の同時打鍵は使用し始めた直後は違和感がありましたが、慣れれば解消されるだろう思いました。実際に使っていると、慣れによって解消されました。(物を掴む脳の構造うんぬんという話は納得できませんでしたが)
親指キーの位置には難を感じていました。[変換]の位置が[M]の下にあるキーボードで[変換]を[右親指]として使うのは、[Y]や[N]との同時打鍵で無理があると思ったのです。実際に使ってみると、これはその通りでした。(そして、それを解消するために、後に「右手一列シフト」を採用しました)
中指シフトを始めたのは、『花のくに』の「シフトはもっともよく使うキーなのだから、最も良い場所を与える」という説明に納得したからでした。実際に使ってみると、中指シフトは良いシステムでした。(文字の配列新JIS配列を取り入れた月配列2-263の方が良いと思ったので、花配列は試しませんでした)
下駄配列を作り始めたのも、月配列をやっていて「これ、前置きシフトじゃなくて、同時打鍵で入力できればもっといいんじゃないの?」と思ったからです。実際に使ってみると、その通り、同時打鍵でより快適に入力できるようになりました。
というように、多くは実際に使い始める前の段階、遅くとも実際に使い始めた直後の段階で、ほとんど正しい印象を得ていたのです。
ただし、その段階での印象というのは、自信を持って「これは自分にとって良い、悪い」と断定できるというほどではありません。
日本語入力を変えるというのは経験のないことですから、自分の印象に自信が持てないのです。なんとなく「そうかもなあ」と思うか「そうかなあ?」と思うかの違いくらいです。
しかし、この程度の違いが分かれば十分です。「そうかもなあ」と思ったものは実際に自分にとっては相性が良く、「そうかなあ?」と思ったものは相性が悪いのです。
と言うわけで、私のおすすめの「自分に合った配列を選ぶ方法」は、実際に配列に触る前に、その配列について書いてある文章をじっくり読むことです。(余裕があれば、少しだけ実際に入力してみるとさらによい)
そして、その文章を読んで、その配列の良さについて「そうかもなあ」と思うことが多い配列を選ぶと良いと思います。きっと、期待通りの感触が得られると思います。